道外禁止の部屋 タ600
製作の構想は十年以上も前からあったのですが、殆どスクラッチになるということで、なかなか実行に移さず時が経ってしまいました。理由は後述するある部材によるものですが、それはさておき先ずタンク体から手を付けます。流用できるキットも見当たらず、真鍮板丸めから始めました。



0,3mm真鍮板を3枚丸めて、一番良いものを使います。最初から、ぴったりの外周寸法に切断して丸めようとしても、端部がはねて丸まらないので、少し余長を取って切断します。木の丸棒でしごいて癖を付けました。
太い棒から始めて、細い棒へと3本程使って丸めます。
思ったより簡単。案ずるより産むがやすし。丸める前に罫書き線を忘れずに入れます。
タンクが丸まったところで、先述した「余長部」を切断し、ハンダ付けをして筒にします。接合部はイモ付けだけですと不安なので、帯板を裏打ちして補強します。
次は難関の鏡板です。丁度良い径の鏡板が他キットから流用出来ればよいのですが、適当なものがありませんので、やむを得ず自作することにします。
あいにく写真を撮り忘れたので、言葉で説明しますが悪しからず。
①適当な径の木の丸棒を削って、おおよその鏡板のRにし、雄形を作る。
②焼きなました真鍮板をこの雄形に被せ、木槌で叩いて整形。
③外周の余分な部分をカットして、タンクにハンダ付けをしてしまい、ヤスリでなめらかに整形します。
台枠へ移ります。CADで平面図を作成し、治具を作ります。ヒノキ棒の内側が側梁の外側になります。これに中梁・側梁のチャンネル材、端梁をセットしてハンダ付けします。
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このタンク受けが暫く製作ストップさせた要因のひとつでした。断面でみると「く」の字型、側面からみると扇型という厄介な形状です。どうしてこんなに凝った形にしなければならなかったのか、全くもって不可解です!
尚、※の板状の部分は受け台とタンク体に挟むパッキン(楢材などの堅木)です。旧いタンク車に見受けられる構造です。実車ではもう少し厚いのですが、製作誤差が響いて薄くなってしまいました。

走り装置のパーツです。
①KATOの2軸貨車用のアッシーパーツ。
②アダチのシュー式軸受部
③TOMIXのスポーク車輪
①の軸受の突起を納めるため、②のパーツの軸受の孔を拡げます。

今回も製作経過をはしょった形になりましたが、こんな感じになりました。出来栄えはともかくも、苦労をした甲斐もあって愛着が沸く貨車です。形も可愛いらしいですね。
実車のことも少し書き添えておきましょう。このタ600形式は誕生した歴史は古く、明治時代に遡ります。雑多な形式をまとめて本形式となったのですが、このタ861は昭和11年三菱製の861~864のロットの一輌です。この形式としては最終製造型で、タンク体は全溶接を採用し、近代的な外観を有しています。
常備駅は手宮。表示板に「運転用燃料油」との表記があり、DL・DCの燃料油輸送に使用されていたと思われます。軸距3mと、シュー式の走り装置が災いし、ヨンサントオでは㋺車に指定され、黄帯を巻かれました。廃車時期は明確ではありませんが、恐らく昭和46年前後ではないでしょうか。